アラビアン・ナイト
- 著者: ディクソン, 中野 好夫
- タイトル: アラビアン・ナイト 上・下 岩波少年文庫 2073
正確にいうと『思い出の本』ではない。シンドバットもアリババもアラジンも何度も読んだけど、この岩波少年文庫のディクソン編/中野好夫訳は初めて。シューと行った図書館で何気なく借りてきてしまった一冊。
シンドバットのお話は知らない冒険話がたくさんあった。ペルシア王やシナの王女の話も、まさにアラビア~ンな物語だけど初めて読んだ。初めてだけど、知ってるような感覚。なぜかって、それはアラビア~ンだから。
なんていうか、まぁ当然なんだけど、宝石・黄金至上主義とでもいいましょうか。オチがだいたい読める。美しさが最高に重要で、登場するどんな王子もお姫様も、みーんな「美しい」というだけで恋に落ちる。外見第一、性格は二の次。尊大でわがままで勝手で自己中だろうと関係ない。とにかく見た目が美しいことだけが最重要。すごく単純でわかりやすい価値観です。
王様は、生まれが卑しい貧乏臭い若者でも、見たこともない宝石を積まれれば、娘を嫁にやってしまう。
お姫様は、父上の言いつけにそむくなんてとんでもないことだから、と言う理由で、喜んでお嫁に行ってしまう。
ちょっと待てそれでいいのか、というようなオチでめでたしめでたし。
気になりだすといろんなことがひっかかりだす。子供の頃はその言葉の重さに気づかずに読んでるけど、アラビアン・ナイトは『奴隷』なしでは語れないほど奴隷がよく出てくる。白人奴隷や黒人奴隷、くろんぼなどと堂々と書いてあるし、悪いやつはユダヤ人かインド人だし、もう差別用語満載。
あと気になったのは、その翻訳された日本語です。
海の王女様グルナーレのお兄さんが、地上の王様に初めて挨拶に行ったときの一節。
「わたくしどもはグルナーレを心から愛し、かわいがっていました。だもんで、まだ小さいうちからたびたび結婚の申し込みはたくさんあり…云々」
これは標準語か。だとしても、王子様あたりが本の中で使う言葉としてはどうかと…。
まぁ笑わせてもらったんだけどもね。だもんでよしとしましょうか。
図書館にある、ロシアの民話とかスペインの昔話とか、小学生くらいの読み物を今になって読み返すと、大人になってからの発見というのも新鮮でおもしろいなぁと思う。
例えばロシアの昔話に出てくる主人公の男は、たいていイワンという名前で、三人兄弟の末っ子で、お人よしで優しくてバカと決まっている。読んだ話の7割がたそうだった。ほんとに。
日本語がおかしくても、差別用語満載でも、シューにはたくさんのいろんな本を読んで欲しいです。